2001年4月
。昨年に続いて、ケイルと九州旅行をした。
今年は福岡・熊本・鹿児島と周り、
各地の友人と会った。
友人たちとの暖かいふれあい。各地の郷土料理を、おいしく食べるなど、
充実した旅行になりました。
ちょっと長くなりますが、宜しかったら読んでください。
東京駅の10番線のホームに上がってみる。
夕方だと言うのに人気は少なく、平日の
ラッシュからは想像ができない静けさだ。
土曜日と言う事と、10番線のせいだろう。
ここは東京駅で東海道線のホーム。
東京から西に向かう長距離の電車、特急そして寝台特急が発着している。
ホームに立ち、少しすると、伊豆の下田から来た「踊り子号」がついた。
土曜の夜という事で、多くの乗客が電車から降り、吸い込まれるように
階段に消えていき、そしてまたホームは静かになった。
私はこれから九州に向かう。
九州の友人たちと会うためだ。
九州では福岡、熊本そして鹿児島と周り、
鹿児島からは飛行機で東京に帰ってくる予定だ。
私がこれから乗る特急は、寝台特急「さくら・はやぶさ号」
寝台特急は別名、「ブルートレイン」と言われ親しまれている。
私は寝台特急に乗るのは3度目だが、相棒の盲導犬「ケイル」は初体験。
事前に停車駅と停車時間を調べてある。
ホームで排泄をさせるためだ。
自宅を出る時と、東京駅に着いてからもさせてある。
東京から福岡までは16時間弱。
列車の中で食事をさせるとなると、途中で排泄をさせたい。
色々考え、停車時間4分の、名古屋でさせることにした。
東京駅でお土産と、夕食の弁当を買った。
以前は食堂車がついていたが、今ではロビーカーになってしまい、
食堂車は無い。
食堂車どころか、車内販売も1部の区間だけの販売となっている。
食堂車で食事をするという、楽しみが無くなったのは寂しい。
以前乗った時に食べた関門定食や、ビーフカレーが懐かしい。
東京駅には乗車の1時間前に着いた。
お弁当を買う時間もあったのだが、ホームでゆっくり
出発までの時間を過ごしたかったためである。
東京駅のこのホームは長距離専用であるが、上野駅の、長距離専用
ホームとは雰囲気が全く違う。
行き先が東北と、東海関西の違いだろうか。
昨年の末、東北に帰って行った友人を上野駅に送りに行った。
そこには、何か重い空気が満ちていた。
しかし東京駅には、静かながらも、明るさがある。
同じ東京の駅でありながら、不思議なものである。
ホームのアナウンスが、「さくら、はやぶさ」が
入選してくることを告げている。
目の前をゆっくり入ってきた。
二度ほどエンジンの大きな音が横切った。電源車であろう。
寝台特急はほとんどが電気機関車による牽引で走る。
架線から電気を取り入れているが、それは走るための電気を
取り入れているためで、客者の照明や空調などは、ディーゼルの
発電機を使う。
九州の鳥栖まで、さくらとはやぶさは連結されているので、電源車は
2台である。
静かに停止して、しばらくしてドアーが開く。
私が乗るのは3号車。A寝台の個室である。
個室は20年前に乗って以来、2度目。
部屋の中は以前とさほど変わってはいないようだ。
ふたがついた洗面台。ふたの上はテーブルとして使える。
ソファー兼ベット。
ゴミ箱などが部屋の設備。
部屋の大きさは横が1メートル20センチ、奥行きが2メートルぐらいだろうか。
この狭い空間で、福岡までケイルと過ごす。
荷物を棚に載せ、足元にタオルを引き、ケイルのスペースを作る。
しばらくして、遠くで発車のベルが鳴り、「ガクン」と、すこし大きな
揺れを起こして、列車は動き始めた。
寝台特急「さくら・はやぶさ」は、長崎・熊本行きである。
「さくら」が、長崎。「はやぶさ」が熊本行き。
以前は別々の列車であったが、利用者の減少から、併結され、
九州の鳥栖まで連結し、そこで分割して、それぞれの目的地に向かう。
私は福岡まで行くので、「さくら」「はやぶさ」の
どちらに乗っても行ける。
A寝台の個室は「はやぶさ」に連結されているので、強いて言えば
「はやぶさ」に乗っている事になる。
定刻に東京駅を出た「はやぶさ」は東海道線を西に向かう。
私はポケットからラジオを取り出し、窓側に置いた。
ちょうど始まったばかりのナイターをかける。
個室なのでスピーカーから音を出す。
リュックの中からは、お茶やお菓子を取り出し、テーブルの上に
お弁当と並べた。
お弁当を食べる用意は整った。
車内検札が終わったら食べるつもりだ。
次の停車駅は横浜である。
横浜に着く前に検札がきた。
車掌さんに、名古屋でホームに下りケイルの排泄をさせたい事、
ロビーカーにある飲み物の自動販売機の場所と、商品の配列を、
手が空いてから教えてもらいたいことをお願いした。
横浜を出てから、来てくれることを約束してくれた。
ロビーカーは隣の車両で動きやすかった。
ロビーカーを案内してもらうまでに、お弁当を食べた。
お弁当屋さんのお勧めの豚の角煮弁当。
やはり旅行の楽しみのひとつはお弁当を車内で食べること。
これを無くして旅行は語れない。
雑音の入るラジオを聞きながらゆっくり食べる。
お弁当を食べていると、「これから九州に行くんだな」と
つくづく感じられた。
やはり旅行とお弁当は切っても切れない物なのだろう。
横浜を過ぎ、お弁当を食べ終わり、少しすると、
約束通り車掌さんが来てくれた。
しかも2人で。
自動販売機は、ロビーカーの先。
そこまでのトイレや、ロビーカーの説明をしてくれた。
自動販売機には、多くの飲み物が並んでいる。
全部を覚えられないので、飲みたいものだけをいくつか覚えた。
個室に戻り、部屋のドアーに印をつけたいと言うと、
ノブに輪ゴムをつけてくれた。
3号室なので、部屋の数は数えやすいが、印を付ける事で、
部屋探しがとても楽になる。
部屋に戻って洋服をスウェットに着替え、くつろげる体制になる。
ラジオから聞こえてくるナイターは、都心から離れるにしたがって
雑音がひどくなる。
ラジオを消し、カセットテープで小説を聞く。
やはり、列車の中なので、西村京太郎だろう。
今回の旅行に二つのタイトルのテープを持ってきた。
とりあえず名古屋までの時間を読書で過ごす。
列車は熱海から静岡に入り、沼津、富士と過ぎる。
富士を過ぎてからは、寝ている人も居ると言うことで、車内放送は無くなる。
名古屋に到着した事は時間で確認しなければならない。
一応、車掌さんが来てくれることになっているが、
もしものことを考え、自分で判断しなければならない。
時々列車は駅に停まる。
ホームの放送でどこの駅かわかる。
寝てしまってはまずいので、携帯電話のスケジュール機能を使って、
名古屋に停まる前にアラームが鳴るようにする。
しかし気が張っていたのか、眠らずに名古屋に着けそうだ。
名古屋に到着する時間は22時46分で、停車時間は4分。
22時40分になり、私とケイルは個室を出た。
名古屋のホームでケイルに排泄をさせるためだ。
車掌さんはデッキでも良いと言ってくれたが、私は
そこでは良くないと判断し、ホームでさせることにした。
車椅子でも使えるくらいトイレが広ければ、そこでさせられたのだが、
仕方が無い。
ロビーカーとは逆に向かって歩く。進行方向とは逆の方向だ。
デッキに立ち到着を待っていると、「準備万全ですね」と
車掌さんが笑顔で声をかけてきてくれた。
私は黙って笑顔で答えた。
列車はゆっくりとスピードを緩める。
夜のため車内放送は無い。
ドアー越しに、ホームのアナウンスが聞こえる。
この列車の案内だ。
列車が止まり、程なくドアーが開く。
さてここからが勝負だ!
私とケイルは急いでホームに下りる。
ハーネスを手早く取り、ワンツーベルトをすばやく着ける。
後はケイルの力を信じる。
私は、落ち着いて声をかける。
私がせかせか声をかけてはいけないと思った。
しかし心の中では、「早くやってくれ!」
と、願っていた。
とにかく勝負は4分なのだ。
いつもは4分以内でしてくれている。
しかしそれは、制限時間が無い時。
時間が限られていると、この4分がとても短く感じる。
ケイルは、私の周りを4回ぐらいまわり、何か目標を見つけたみたいだ。
その目標に向かって足早に歩く。
後からわかったのだが、その目標はホームの柱だった。
ケイルは何のためらいも無く、おしっこポーズ!
「グッド!グッド!」の声にも、心が入る。
さほど量は多くなかったが、これで一安心。
すぐ近くで見ていた車掌さんは、とても感心していた。
ハーネスを着け、ドアーに。
車内に入り、時間を確認すると、所要時間はおよそ2分少し。
余裕のトイレタイムだった。
おしっこをトイレに流し、私とケイルはホッとして、
個室に戻った。
私は思う。ケイルがワンツーベルトで排泄ができて本当に良かったと。
もしもできなかったら、ホームを汚さなければいけなかったのか、
デッキで新聞やタオル、ペットシートなどを敷いてさせたのか?
どちらにしても、大変な思いをしなければならない。
いや、寝台特急で旅行自体できなかったかもしれない。
盲導犬をもっと行動的にさせるためにも、排泄の問題を考えて
いかなければならないと思う。
私もトイレを済ませ、ベッドに横になる。
レールの響きが子守唄になり、いつしか眠ってしまった。
朝起きたらどのあたりだろうか?
列車の揺れで目を覚ます。
電気機関車による牽引なので、動き始めるときに、「ガクン」とした
ショックが起こるのは仕方が無い。
何度かの目覚めではっきりと目覚めてしまった。
時間を見ると、朝の4時30分。
今はどの辺を走っているのだろう?
広島あたりだろうか?
空調のせいだろうか、咽が渇いている。
乗車前に買った飲み物はすべて飲み尽くした。
ロビーカーの端にある自動販売機に行くことにした。
私がごそごそやり始めたのでケイルは出かけると察知し、やる気満々
ポーズをとる。このポーズは前足を伸ばし背伸びをするのだが、私は
これを「やる気満々ポーズ」と言っている。
静まり返っている通路に出てロビーカーに向かう。
ロビーカーには、話し声は聞こえなかったが、何人かはいるようだ。
眠れなくてタバコを吸いに来ているのだろうか?
車掌さんに教えてもらったボタンを押そうとしたが、間違えて違うボタンを押す。
とりあえず2本買い、部屋に帰る。
ジュースをテーブルに置き、ハーネスを外しダウンさせる。
間違えて買ってしまったのをあけてみる。
コーラだった。
もう1本はコーヒー。
これは朝食の時のためにとっておく。
コーラを飲み終え、トイレに行き、再びベッドに横になる。
再び目が覚めたら、7時を回っていた。
列車の揺れで目が覚めたのか、それとも車内放送が始まり、
それで目が覚めたのか。
通路ではお弁当を売る声も聞こえる。
途中の駅から乗って来たのだろう。
しばらく横になったままでいる。
山口県の駅をいくつか過ぎていく。
トイレを済ませ、朝食にする。
朝食は前日に買っておいた菓子パン。
そして先ほど買ったコーヒー。
窓の外からは暖かい日差しが入ってくる。
当分は雨に降られることはなさそうだ。
8時36分、下関に到着。
ここで、関門トンネル専用の機関車に付け替える。
あっという間にトンネルを過ぎて、ついに九州上陸。
8時46分、門司に到着。
ここでまた機関車を付け替える。
そして2時間ほどで福岡へ着く。
このはやぶさは寝台特急だが、朝になると1部の寝台を座席に変え、
普通の特急電車として走る。
勿論個室はそのまま使える。
通路を歩く人が増えた。
途中から乗ってきた人なのだろうか?
福岡着は9時53分。
9時30分になり、洋服を着替える。
ケイルは降りる事を察知し、お約束のポーズ。
テーブルに出した物をリュックにしまい、準備を整えた。
車掌さんは、降りるときも来てくれるとは言ってくれたが、5分前に
なってもこない。
スピーカーから、福岡に着くことを告げている。
荷物を持って、ケイルと私は通路に出てデッキに向かう。
デッキには何人かが既に到着を待っていた。
列車がホームに着いたが、車掌さんは結局来なかった。
ケイルにとって長い16時間が終わった。
昨夜、名古屋で排泄は済ませたが、たまっているだろう。
急いで改札に向かう。
改札で友人のTさんと待ち合わせをしていたが、Tさんは来ていない。
携帯電話を取り出し、Tさんにかけようとしたとき
Tさんから電話が入った。
改札が違ったみたいだ。
程なくTさんが来て、急いで外へ。
駐車場の片隅で、ケイルのトイレをさせる。
かなりたまっていたみたいだ。
これでケイルも私もすっきり。
Tさんの車に行くと、Tさんの飼っている、黒ラブのビリーが迎えてくれた。
ビリーは犬見知りするけど、ケイルは大丈夫のようだ。
私たちは、Tさんのお店に向かった。
今回の主たる目的は、Tさんのお店でのOFF会。
何のOFFかと言えば、ケイルの友人たちの集まりです。
私は単なる付添い人。
ケイルの友人、いや友犬には、ケイルと同じラブ、シェパードなどいます。
また人間の友人もたくさんいて、モテモテ野郎です。
付添い人の私もしばしばやきもち。
さて、Tさんのお店は、福岡の大壕公園の近くにあります。
お店には犬グッズを売っていて、食事もできます。
もちろん犬連れOK。
普段は特別扱いの盲導犬であるケイルも、
ここでは普通扱い。
お店に、人間7人。犬5頭が集まりました。
1年ぶりの再会です。
私が盲導犬と歩くようになり、安全に安心して歩けるようになった事は
当然ですが、副産物として、友人がたくさんできました。
ぎこちない人と人との間も、犬が間に入ると、スムーズに
行くようになります。
もちろんこれだけ友人ができたのは、インターネット・ホームページの
おかげでもあります。
また、盲導犬について、話をしてもらいたいという、学校からの要望により
各学校に行ったりすることも、友人を増やすことになりました。
街中を歩いていても、声をかけられたり、挨拶をしてくれる人も増えました。
盲導犬を持つことによるメリットは、想像以上のものでした。
そんな楽しいことが次から次と出てくる、うちでのこづちのような
ケイルと、彼の友人たちを大事にしていきたいと思っています。
また彼の友人たちは、いい人ばかりで、話していて、いや近くにいるだけで、
暖かく幸せになれます。
ですから、また来てしまったのでしょう。
言い忘れましたが、このOFFの名前は
「めんたいこOFF」
今年は第2回です。
来年も必ずやります。
お近くの人はぜひきてください。
遠い人も待ってます。
お話や食事を済ませ、皆で大壕公園へ行きました。
去年の第1回は、この公園でした。
友人の中に、フリスビーをやっているペアーもいまして、フリスビーで
遊んだり、ボール遊びをしたり、時間を過ごしました。
私もフリスビーに挑戦!
もちろんケイルの出番はありません。
臨時にシェパードのバンちゃんとペアーを組み、やり方を教えていただき、
初めての経験。
フリスビー自体は、中学生の時にはまっていましたから、投げ方はばっちり。
しかし、急造ペアーは、やはりダメでした。
遊ぶにしても、ゲームをするにしても、
盲導犬と歩くにも、やはり気持ちが通じないとダメなようです。
もしもケイルと、楽しめたらとても良いだろうな。なんてかなわぬ
思いをしながらフリスビーで楽しんでいる犬たちを眺めていました。
夕方になり、解散となりました。
来年も来ることを約束して、それぞれの家路に向かいます。
私は、Tさんと、もう1度お店に戻り、従業員のユキちゃんと3人で、
博多ラーメンを食べに、中州に繰り出しました。
やはり、博多に来て、ラーメンを食べない訳には行きません。
もちろん替え玉しましたよ。
今日は福岡から、熊本へ移動。
午前中にTさんのお店に寄ってから、福岡駅へ向かう。
Tさんには1宿2飯お世話になった。
お店の近くに止めてあった車の脇で、ケイルのワンツーを済ませる。
お土産に、めんたいこを買いたかったが、時間がないためTさんにお金を
渡し、後から送ってもらう事にした。
福岡駅にもめんたいこは売っているのだが、私が買いたいめんたいこは
駅には売っていないようだ。
駅に着き、切符を買い、Tさんとホームへ。
これから乗る特急つばめはまだ来ていない。
売店でお弁当と飲み物を買っていると、特急は入線して来た。
停車時間が少しあるので、Tさんは車内まで送ってくれた。
座席に座り、別れの挨拶。
長く一緒にいると別れがつらくなる。
Tさんからも、別れ惜しい気持ちが伝わってくる。
何度も何度も同じ言葉の繰り返し。
思いを振り切るように、車内から出て行った。
まだ時間はある。
Tさんは窓の外にいるのだろうか?
見えない視線を、ホームに送り、Tさんを探す。
すると、Tさんが車内に現れた。
売店からチョコレートを買って来たのだ。
「これ食べて。」
そう言ってまた出て行った。
今度は窓の外にいるようだ。
こつこつと窓をたたく。
私は笑顔と、恥ずかしさのため、小さくなった手を少しだけ振る。
やがて、発車のベルとアナウンスに押されて、つばめは
静かに動き始めた。
視線をTさんの方に向けながら手を振る。
今度は先ほどよりも大きく、高く振る。
熊本には、午後3時ごろ着いた。
今からでは、市内観光はちょっと無理だろう。
熊本の友人と食事をする約束を7時に入れていた。
ホテルに7時少し前に迎えに来てくれる手はずになっている。
熊本駅から、ホテルに向かうタクシーの中で、運転手さんが簡単な
案内をしてくれた。
熊本は初めてだったので、熊本城と、水前寺公園に行ってみたかったが、
今度来た時にとっておこう。
ホテルはインターネットで調べた。
福祉に力を入れていて、バリアフリーを目標としているようだ。
もちろん盲導犬もOK。
ホテルの名前は、「アークホテル熊本」
とても清潔で、従業員の接客態度もとてもよかった。
部屋の大きさや、エレベーターからの移動のことも考慮してくれて、
とても助かった。
ケイルのトイレをバスルームで済ませ、
部屋で少し休み、シャワーを浴び、迎えが来てくれるまで、
1階のロビーで、コーヒーを飲みながら時間をつぶした。
約束の時間の少し前に、私を尋ねて人が来た。
約束した友人と一緒に来た人だ。
友人はタクシーの中で待っていた。
友人のHさんとは、およそ2年ぶり。
Hさんは、私と同じアイメイトユーザーです。
一昨年のアイメイトの総会で会って以来だ。
Hさんとその知り合いの方と私の3人は熊本料理のお店に行った。
Hさんの知り合いの方がもう一人来ることになっている。
3人はお店に入り、カウンターについた。
ほどなくして、Hさんの知り合いのSさんがきた。
Sさんも盲導犬の使用者。
私とは初対面になる。
4人の足元には3頭の盲導犬が静かにダウンしている。
私はお酒はダメなので、食べることにせいを出す。
初めての熊本なので、とりあえず名物の馬刺しに挑戦。
私は好き嫌いが無いので、何でもおいしく食べられる。
馬刺しも美味しく食べられた。
なんと馬刺しが苦手なHさんの分もたいらげてしまった。
他にもたくさん出てきたが、どれもおいしく、箸が進む。
Hさんと、Sさんとにはさまれ、会話も進む。
お店の人も親切で、色々説明をしてくれる。
食事も終わりの頃になり、初物の西瓜がデザートで出た。
さすが南国熊本と納得して食べる。
食事を終え、店の外に出る。
ずうずうしくも、Hさんにご馳走になってしまった。
タクシーを呼んでもらい、私は皆と別れ、ホテルに帰った。
ホテルの従業員さんに、部屋まで送ってもらい、部屋に入る。
しばらくテレビを見ながら横になる。
疲れていたのか、おいしいものをたくさん食べたせいか、
うとうと寝てしまった。
夜中の1時に目を覚ました。
ケイルも寝ているようだ。
ケイルを起こし、バスタブでワンツーをさせる。
私はシャワーを浴びてから、もう1度ベッドに入る。
明日の朝は、ホテルで食事をして、1番の特急で
鹿児島に行くことにしている。
シャワーで目が覚めたのに、すぐにまた寝てしまった。
モーニングコールで目が覚めたが、
ベッドの中でぐずぐずしていた。
当然、朝食に間に合わず、無駄なことをしてしまった。
電車の時間にはまだ早いがホテルをチェックアウトした。
フロントでタクシーを呼んでもらう。
通勤時間のせいか、昨日駅からホテルに来た時よりも時間がかかって
熊本駅に着いた。
それでも、出発の時間に間がある。
ホームのベンチに座り、特急つばめを待った。
高校3年の夏、私は友人のAと西鹿児島の駅に降りた。
鹿児島に来たのは、雑誌の懸賞でホテルの宿泊が当たった事と、当時
日本で最長距離を走っていたブルーとレイン「富士」が
秋に宮崎止まりになってしまう事の、二つのきっかけでやって来た。
今回来たのはそれ以来の鹿児島。
「10年一昔」とはよく言うが、
今回は「20年ふた昔」というところだろうか。
駅には去年の福岡での「めんたいこOFF」に来てくれたUさん夫婦が
迎えに来てくれた。それからアイメイトを引退したBちゃんも迎えてくれた。
去年Bちゃんに会った時、彼女の身の上におこった事、盲導犬として
働いた事、そして素敵な人に暖かく迎えられ、幸せに暮らしている事を
思っていたら泣けてしまった。
今年のOFFに参加を呼びかけたが、Bちゃんが、長い距離の移動が
きついという事で、私が会いに来たのだ。
Bちゃんは去年会った事を覚えているのか、私の顔をすぐになめてくれた。
今年も会えた喜びが、胸の奥から湧いてくる。
Uさんは他にも2頭の犬を飼っているが、本日は家でお留守番。
人間3人と、犬2頭で、鹿児島の観光に出発した。
まずはお昼ご飯。錦江湾を左手に見ながら薩摩半島を南下する。
石油の備蓄基地で有名な喜入をすぎ、指宿の手前で山側に入る。
「イッシー」で有名な池田湖に来た。
ここで「そうめん流し」を食べる。
けっして「流しそうめん」ではない。
ここで「そうめん流し」について説明しよう。
「流しそうめん」は、樋を水と一緒にそうめんが流れてくる。それを箸で
つまんでつゆに付けて食べる。
しかし「そうめん流し」はそれと違う。
5・6人ぐらいが座れる丸テーブルがあり、そのテーブルの真中に、
直径7・80センチぐらいの「たらい」みたいなものがあり、その中に水が
ぐるぐる回っている。水は新鮮なものが桶の周囲から流れ込む。
桶の中心には排泄のための筒がある。
水が回転しているのは、流入している水の勢いのようだ。
そうめんを、その中に入れ、回ってくるそうめんを箸でつかんで食べる。
箸を水の中に入れれば、かってにまとわりついてくる。
目が見えなくても容易に取ることができる。
水は湧き水を使っているのだろう、とても冷たいのでそうめんも冷える。
しかしネーミングは「そうめん流し」よりも
「回しそうめん」のほうが良いような気がするのは私だけだろうか。
さて食事の後は、お風呂。
お風呂と言えば温泉。ここで温泉と言えば指宿。
指宿と言えば「砂風呂」
という訳で砂風呂に向かう。
指宿が有名ではあるが、隣の山川というところにも砂風呂がある。
最近ではこちらのほうが人気があるようなので、山川の砂風呂に行く。
現地では「砂風呂」ではなく「砂蒸し温泉」と言っているようだ。
Uさんのご主人が、受付でケイルも一緒に行けるか聞いてきてくれた。
浜まで一緒に行くのは良いが、誰かに見ていてもらいたいということなので、
まずは私と、Uさんご主人が入る。
ケイルは奥さんのKさんに見ていてもらう。
裸の上から浴衣を着て、砂浜に下りる。
砂は暑くは無いが、心なしか空気が暖かい感じがするが、気のせいだろう。
ケイルは先に来ていた。
係の人が穴を掘ってくれる。
その穴に横になり、砂をかける。
砂が重い。
子供の頃、海に行くと、よくこんな事をした。
懐かしい思い出をたどるうちに、砂がかかってくる。
顔に砂がかからないように、タオルで顔を覆いながら首まで砂をかける。
ケイルは頭のすぐ上に、興味津々で覗き込む。
係の人がせっかく気をつけて砂をかけてくれたのを、
ケイルの前足でダメにしてしまった。
ケイルの足が私の顔にヒットしたのだ。
顔といわず、口の中にも砂が入った。
みんな思わず苦笑い。
砂をかけている途中から、背中と腰のあたりが暖かくなってきていた。
砂蒸しは初体験。砂の重さと、温泉の蒸気とで、とても気持ちが良い。
20分ほどで砂からでる。ちょっともったいない感じがする。
建物の中に入り、浴衣を脱ぎ、簡単に体を温泉で流す。
ロビーでKさんからケイルを受け取り、交代である。
お風呂上りの感覚は普通の温泉を出たのと同じように気持ちが良い。
Kさんが出てくるまで、コーラを飲みながら時間をつぶす。
今夜の宿泊は桜島。
時間があれば知覧によりたかったが、遅くなりそうなのでそのまま向かう。
桜島には鹿児島市内からフェリーで渡る。
フェリーは、1時間に数本出ていて、市民の足になっているようだ。
桜島までは10分少しの短い距離。
あっという間に着いてしまう。
9. 桜島の国民宿舎と温泉
鹿児島での宿泊は桜島にある国民宿舎。
鹿児島からのフェリーが着く港から近い。
まだ新しい建物のようで雰囲気がいい。
海も近く、のんびりできそうだ。
もちろん温泉。
部屋のドアーは総て引き戸。車椅子の利用を考慮しているのだろう。
部屋も、バスルームも広い。
これならケイルの排泄も容易にできる。
2頭いっしょにでもできそうだ。
夕食前のひとときを、外で過ごす。
Uさんの家から、お留守番に残っていた犬を連れて来てくれた。
ゴールデンのRくんは去年福岡で会っている。
覚えていてくれているかな?
彼はとても友好的で、しっぽブンブンで来てくれた。
宿舎の前は海。
桜島から鹿児島まで行き来しているフェリーのエンジン音。
スピーカーから流れる観光案内の声も聞こえる。
海岸沿いに、木で作られたデッキが続く。
平日のためかほとんど人気はない。
夕食は宿舎のレストラン。
Uさんの犬を家に置いて来てから、夕食になった。
このレストランは郷土の食材を使った、手の込んだものだった。
おいしく食事をすませてからUさんと温泉に入る。
Kさんは犬がいるため自宅に帰った。
ケイルは脱衣所まで入って良いということなので
ケイルの排泄を兼ねていっしょに温泉に行く。
温泉は別棟になっていて、男女の各大風呂。そして家族風呂。
家族風呂と言っても4人ぐらい一緒に入れそうな大きな風呂である。
予約が必要でUさんは予約をしておいてくれた。
ゆっくり温泉に入っていると、疲れが足の指から
ゆっくりと出て行くようで気持ちが良い。
部屋に戻りUさんと雑談をしていたが
旅の疲れのせいか、温泉の効用か眠気が襲ってきた。
今回の旅行で1番深い眠りについた。
九州最後の日は、小雨の朝だった。
旅での雨は、足を止めるものもあれば
旅情を誘うものとがある。今朝も雨はさほどの雨ではなさそうだ。
天気予報も降ったり止んだりと告げている。
結局ほとんど雨に降られることはなく、その後を過ごせた。
食堂で、Uさんと朝食を済ませ、
部屋でKさんが来るのを待った。
Uさんは今日は仕事。
車でやってきたKさんが、フェリー乗り場まで送っていった。
今日の予定は、お昼にアイメイトユーザーのKUさんと会い、昼食を取り、
夕方に飛行機で東京に戻ることになっている。
相談した末、午前中は、市内にある、公園を散策することにした。
UさんのところのBちゃんは、Uさんの友人の家で
預かってもらう事になっていた。
友人の家に寄り、公園へ。
この公園は数年前に大雨で壊れた石橋を、修復し移築してある。
石橋の公園である。
コースに沿って歩くと、5つほどの橋を渡れる。
雨上がりの公園は、空気がすがすがしく気持ちがいい。
ゆっくり公園を周ってから繁華街に向かった。
車を駐車場に停め、鹿児島で1番の繁華街である、天文館へ。
天文館と言っても、通りというか、町の名前。
ここにある薩摩料理のお店でKUさんと待ち合わせになっている。
約束の時間まで間があるので、お土産屋さんで時間をつぶす。
待ち合わせの薩摩料理のお店の名前は「薩摩路」
KUさんがセッティングしてくれたのだが
このお店は、以前来た時にここで夕食を食べている。
なんと言う偶然だろうか。お店の場所もなんとなく覚えていた。
九州に来る前から、このお店に来ることはわかっていた。
お店の名前を覚えていたのだ。
なぜ20年も前に来た時のお店の名前を覚えていたのかといえば、
以前来た時に、マッチをもらっていた。
そのマッチを自分の机の引き出しに入れていた。
今でも入っているだろう。
時折、そのマッチを見ていたため、脳裏に焼き付いていたのだろう。
今回、このお店に来るとわかってから、楽しみの一つになっていた。
約束の時間より少し早くお店に行った。
お店の前の道は、記憶していたよりも少し広くなったようだ。
お店の中に入ると、KUさんはまだ来ていなかった。
お店の中の様子は、以前とさほど変わっていないかな?
いかにも郷土料理のお店の雰囲気だ。
盲導犬ユーザーのKUさんが決めたお店なので、
もちろん入店拒否はない。私とケイルを暖かく向かえてくれた。
まずはお茶をいただいてUさんを待った。
ほどなくしてKUさんがきた。
KUさんとは昨年のアイメイトの同窓会の総会で会って以来、
1年ぶりだ。
驚いた事に、アイメイトのPちゃんがいない。
家においてきたと言うのだ。
訳を聞けば、体の調子が良くないようなのだ。
数日後に同窓会で東京に行く予定なので、
無理はさせられないということだった。
私たち3人は、KUさんを中心に、鹿児島での盲導犬の話や、
今回の旅行の話など、尽きることなく話が進んだ。
もちろん薩摩料理の話を、お店の主人と話したりもした。
その中で、私が20年前にここのお店に来たこと。
そのときマッチをもらって帰った事などを、主人に話すと、
新しく作ったマッチを持って来てくれた。
20年前のマッチは無いという事だ。
しかし、しばらくすると、また違うマッチを持ってきた。
私が以前もらったマッチの次に作ったものらしい。
そんな話に花が咲き、マッチはもちろん、色々なものをお土産に
頂いたり、サービスで1品付けてくれた。
もちろん料理はとてもおいしく、楽しく昼食を取れた。
主人に、鹿児島に来たときは、必ず来ることを約束してお店を出た。
おいしい薩摩料理を食べた後は、もちろんデザート。
鹿児島でデザートと言えば、もちろん「シロクマ」
知っている人には有名なシロクマ。
知らない人には、「えっ!白熊食べるの!」なんて
言われてしまう「シロクマ」
シロクマというのは、簡単に言うと、カキ氷。ではカキ氷と、シロクマの
違いと言われても、違いのわからない男なのだ。
難しい講釈はおいておいて、とにかく目指すお店に。
シロクマのお店は天文館にある。
テレビなどで何度も紹介されている、有名なお店だ。
シロクマを地方発送しているみたいなので、
興味のある人は食べてみるのもいいだろう。
数多くのメニューがある。私はチョコレートを食べる。
チョコレートのシロップが使われているのはもちろん、チョコレート
ポッキーがささっていたり、かなり豪華だ。
量も多い。シロクマを食べる季節ではなかったのかもしれないが、おいしく食べた。
これが夏真っ盛りだったら、もっとおいしく食べられただろう。
今、無性に食べたい気分だ。
私は冷たいものを食べるとすぐに頭が痛くなるので、ゆっくり食べた。
冷たいものを食べた後は、やはり暖かいもの。
というわけで、コーヒーを飲みに行く。
コーヒーがおいしいという店に入る。
私の好きなマンデリンを注文した。
おいしいコーヒーだった。
シロクマの店も、この喫茶店もKUさんの案内で歩いた。
地元とはいえ、よく覚えている。
いつもは盲導犬のPちゃんと歩いているのを、今日は
Kさんの手引きで歩いている。
複雑な気持ちで私たちを見ていたようだ。
客観的に盲導犬とそのユーザーを見て、盲導犬の良さが、
ますますわかったようなことを言っていた。
鹿児島の空港は市内からかなり離れている。
出発の時間を考慮して、早めに空港に向かう。
KUさんも空港まで送ってくれた。
空港の駐車場の片隅で、九州最後の排泄を済ませ、搭乗手続きをする。
鹿児島から羽田までは1時間少しなので、
トイレの心配が無いので気が楽だ。
搭乗まで、3人で話をした。
今回の旅行で、九州の人々の心やさしいところが
いっそうわかった。
前回来た時もそれを感じていたので、今回も来たと言えるのだが、
その思いが強くなった。
来年も必ず来るという思いがその証拠を裏書している。
搭乗のアナウンスが流れ、別れの言葉を交わし、私とケイルは
飛行機に乗った。
終わり。
追記
長いこと読んでいただいてありがとうございました。
どこに旅行をしても、人々の暖かさに触れたときは、
幸せと喜びを感じます。
また、相棒のケイルと一緒にその喜びに出会えるのも、盲導犬ユーザーの
先輩方、各地のユーザーの人々。そして各協会の職員の人たちの
ご苦労があったからだと思っています。
新米である私が出来る事は、先輩が作ってくれた道を汚さないこと。
そして、後輩が歩きやすいように整備をする事だと考えています。
それでは稚拙な旅行記でしたが終わりにします。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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